スキーに行ってみた

 行ってきましたよ、スキー。数十年ぶり。

 いきなりスキー場に行っても、ということで、まずはとある休日に、近くの公園に出かけて数十年ぶりにスキーをしてみました。すると、感覚が案外とすぐに戻る。あのキツキツのスキー靴の感覚というのは、何十年経とうとそうは消えないものですね。そうなると、スキーを装着する(言い方合ってる?)感覚も自ずと蘇り、気持ちが高ぶってきます。まずは緩い傾斜の、間違っても妙な方向に流されない斜面を滑ってみると、ほぼ「アッという間に」という時間感覚のうちに、数十年前にスキー場で滑っていた感覚が戻ってくるのです。

 これは面白い。以前書いたように私はチェロを弾くのですが、数か月のブランクを置いてチェロを触ると、感覚が戻るまでは一日単位での時間を要する。他方、スキーについては、ほぼ一瞬で数十年の空白を飛び越えたわけです。もっともこれは、私のスキーの腕前がごくごく初歩的なものだからでしょう。チェロについては、うまいとはとても言えぬにせよ、それなりに打ち込んだ時期もあり、ある程度はできることもある。数か月時間を置くと、そうした「できること」ができなくなっているので、「あちゃ~、リハビリが必要だね」と痛感するわけです。それに比べれば、スキーについては、初歩の初歩ができるだけだから、戻り(?)も早い、ということでしょうか。スキーについても上級者の方なら、久しぶりの場合(特にシーズン始めなど)、カンを取り戻す時間が必要なのかもしれませんね。

 

 さてさて、もとに戻れば、この「滑る」という感覚は単純に面白い。というわけで、折角ですしスキー場にも行ってきました。私の家は実はスキー場にほど近く、これを生かさぬ手はないと思ったのです。

 もっとも、現状休日の混雑したスキー場に行くのはちと憚られるわけで、有給休暇をとって平日に行ってきました。一緒に行く娘はまだお休みの最中です。

 数十年ぶりのスキーは大変楽しく、体を少しコントロールするだけで、爽快なスピードが味わえることがとにかく面白くて仕方がない。子どもに帰ったようです。私の行ったスキー場には相当長い距離を滑ることのできる初級コースがあるのですが、こちらを何度となく滑りました。また、これまた何十年ぶりのスキーリフトに娘と並んで座る感覚も、懐かしく嬉しく、良いことだらけだったわけです。途中、思い切って中級コースに行ったら、スピードをコントロールできず林に突入し、ちょっと面倒なことになったりもしたのですが(雪質の柔らかいところで転倒してしまい、ビンディングのヒールピースが自分では押せなくなってしまったのです-通りがかった方に助けてもらいました)、それも経験でしょう。あと、娘が「お父さん、案外と滑れるじゃん」と、ちょっとだけ私を見直してくれたことにも、悪い気はしない。

 私は今それなりの年齢のわけですが、中年真っ盛りにして、これまで関心を持たなかったスキーが楽しくてしょうがない。行ったのは一回だけだけれど、ぜひぜひまた行きたい。朝は、とりあえず件のスキー場のWebサイトを見て、行くこともできぬのに、雪質のコンディションなどを眺め、またそこを滑る日を夢想しているのです。妻子を大事にしてきた良き家庭人が、中年にしての初めての「遊び」がきっかけで愛人に狂うのに近いかしら? 家族団らんの最中にひそかな罪悪感と共に、愛人の姿を思い浮かべるのってこんな感じ? 違う? いや、案外共通点があるような・・・

 スキー道具、高い買い物ではありましたが、こうした気持ち(←どんな気持ちだ)を味わえて、実に満足です。良い買い物でありました。

 

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