『交換教授』

 何やら小説づいているけれど、またまた読んだ本の話題。

 数日前に何とはなく図書館を歩いていたら、『交換教授』というタイトルが目に入った。昨年11月23日の記事、「読んだことのない本を告白する」で紹介した、「自分が読んでいない本を挙げて、それを読んでいた人の数がポイントになる」という、なかなか悩ましいゲームの元ネタである。これは良いきっかけと思い、早速借りてきた。

 粗筋は、アメリカとイギリスそれぞれの英文学の教授が教員交換制度を利用して、互いの大学に滞在、最後は妻までをも交換することになる、というもの。「ネタバレ」をするな、という声もあるかもしれないが、この小説は結末を明かしたところで問題はない。現に手元にある2013年出版の白水uブックス版では、裏表紙にこの粗筋が書いてある。重要なのは、結末に至る中で起こる数々のエピスードの面白さや、これを通じて露わとなる英米の文化的ギャップ、あるいは人間の本性といったものであろう。作者デイヴィッド・ロッジが試す様々な文学的実験は、嫌みがないが、知的な洗練を感じさせるものだ。「小説」というジャンル自体が好きであれば、ぜひ手にとってください。多分、損をした、とは思わないと思います。私自身は、今週は、自由な時間は大概この本を読んで、あっという間に読み終わりました。なお、もっと早くに読んでおきたかったような気もするが、登場人物の年齢(40歳)に近いことでより楽しめた、という意味では、この時期に読んで良かったのかもしれない。

 デイヴィッド・ロッジについては、他にも面白そうな本がいくつかあるので、読んでみるつもり(このブログに書いたことは「実現」することが多いので、ここに宣言させていただきます)。

 

 思い返すと、『交換教授』のタイトルは、高校生の頃から知っていた。当時の白水社uブックスは、可愛いともちょっと不気味とも言える顔のデザイン(今調べたら、ピカソのFAUNSKOPFというタイトルの作品だそうです)が印象的で、そのためか、このシリーズに収められていた小説のタイトルのいくつかは、記憶に留まっているのだ。多分、このシリーズの一冊である『ライ麦畑でつかまえて』が当時(今でも?)持っていた神話的イメージと共に、記憶に住みついたに違いない。『交換教授』というタイトルも、そんなわけで、私の意識の周縁にずっと住みついていたわけで、今回読み終えることができ、何というか、うまく言えないが、とても満足なのである。

 

M&M’s

 

追記:件の読んでいない本を挙げる、というゲームは「屈辱」というそうで(素晴らしいネーミングだ!)、上に挙げた2013年の版では、pp.207-209あたりで出て来ます。