オーディオ機器購入思案中

 消費欲求が増している、というわけでもないけれど、ミニコンポの購入を考えている。結婚以来家人が持っていたミニコンポで音楽を聴いていたが、一年ほど前に完全に故障してしまい、以来、音楽は専らCDラジカセで聴いていた。どちらかというと歌曲や室内楽が多いので、それほど困らない。無精者でもあるので、故障を直すが面倒、というのもあった。

 とはいえ、オーケストラの曲をちゃんと聴いてみたい、という思いもあり、ここ十日ほどの間に、重い腰を上げてあれこれ調べてみた。

 まず、故障したミニコンポの修理について。これは15,000円ほどかかるし、修理後もまた故障が起こる可能性は結構ある、とのことで断念。メーカーの方も、「それだけ古いものなら、修理代を新しいものに回すほうがよろしいかと」とおっしゃっていた。

 となると、新しいミニコンポを、ということになる。とりあえず家電量販店に行って、店員の方に色々とご相談をしてみた。

 「予算は5万円~6万円程度」「聴くのはクラシックがメインで室内楽が多い」「以前使っていたのはDENONで、スピーカーをそのまま使うことも候補の一つ」といったあたりが、こちらの提示した事項。店員の方は親切で、かなり長時間相談に乗ってくださり、候補を三つにまで絞り込んだ。

 そして、後日同じお店を家人と再訪。五つほどジャンルの異なったCDを持ち込み、かなり長時間かけてこれら三つの聴き比べをしてみた。それなりに時間をかけると、一応は三つの根本の違いはわかってくるように思う。ただ悩ましいのは、最初は違いがわかっても、音楽を聴いているうちに、段々と、そうした違いはどうでもよくなっていく点。最初はコンポごとの「音質の違い」に耳がいくのだが、聴いているうちに「音楽」のほうに注意が向き、あるいは「音楽が喚起する感情の流れ」の方が大事になってしまい、「音質の違い」が気にならなくなってします。こういうと、まるで音楽の本質を大切にしているようだけれど、別にそういうことが言いたいわけではない。「音質の違い」を理知的に捉えることができなくなるのは、多分そうした事情に基づくのだろう、と思っただけのことだ。

 いずれにせよ、悩ましい。

 

 ところで、折角だからということで、展示されていた13万円ほどのコンポも聴いてみた。聴いてみると、エコーがあまりかからず、裸の音が立ち上がってくるような感じがあり、考えようによっては、安いほうのコンポに比べて物足りない、ともいえる。ただ、段々と聴いていると、こちらのほうが、余計なものの少ない、コンサートホールの音そのままに近いような気もしてくる。そのために、室内楽などでは音の分離がはっきりしてくるようにも思われてきた。

 もっともこの感覚が、「お値段の高いものはいいものに違いない」という余計な先入観によるものなのか、はたまた事実そのものをとらえたものなのかは、はなはだ心もとない。自分の「耳」にそこまでの自信は持てない。

 こんなふうにも考えた。私たちははなはだ物持ちがいいので、ここでコンポを買ったら、また10年か15年は使うだろう(故障した時の部品の問題を脇に措けば、ですが)。そうすると、人生でミニコンポを買うのはこれを含めてあと二回くらいかもしれない。それならば、思い切って高いものを買ってみるのも勉強か。

 

 結局ここまで考えが煮詰まると、購入はできませんよね。年末のバーゲンもあるかもしれないし、ということで、一度撤退と相成りました。

 要は、思い切って13万のコンポを買うかどうかに迷っているのです。例えばウィスキーなんぞはちょっとした贅沢をして一杯数千円のものを呑んだとして、それが失敗だったとしても、それはそれで勉強、と思えるのだけれど、13万円のコンポだと、万が一音が気に入らなくなったときにも同じように思えるかわからない。大体この手のものは、家の環境もあるだろう。考え始めるとわからないことだらけだ。

 オーディオに一家言ある方がいらっしゃれば、考え方など教えていただきたく、駄文を記した次第。徹底的にオチがなくってすいません。

 

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