ちょっと得をした

 先日ドライアーの回顧上映会に行ってきてからちょっと映画づいている。系統だってとはいかないのだが、何とはなく心の隅で気になっていた様々な映画を、時間の合間を縫いながら見ている。

 そんなさなかの些事を一つ。

 中身は、キェシロフスキの一連の初期作品を巡る話です。最近、時折通っていたレンタルDVD店が建物の改修の関係で閉店を予告しており、店が閉まる前にそこでしか借りることができない入手困難な作品を観ておこうと思い立った。その際の候補の一つが、件のものだったわけである。彼の初期作品集は三枚のDVDにまとまられ、とりあえず第1巻を借りてきて楽しく鑑賞し、返却した後、続いて第2巻と第3巻を同時に借りてきた。

 さて、ここで、彼の作品の緊張感や映像美を論じることができれば良いのだが、話は大きく脱線し、セコイ方向に行く。

 ある朝、借りてきた二枚を含むDVDを返却に行くと、件の店では「閉店セール」ということで、レンタルのDVDが安値で売りに出されていた。おお、そうすると、既に返してしまった第1巻を購入できるか、と思って探してみたが、これは既にない(ケースがないものはセールで売れてしまっているわけです)。ここで一考、第2巻と第3巻が棚に戻されるのを待とうかとも思ったが、なんだかそれはとてもいけないことのような気がして、とりあえず職場に向かった。しかし、この二枚、なかなか手に入らないものでもあるし、その日は職場を定時に退出し当の店に向かってみたのです。なんだか、運試しをしているような、不思議な思いを覚えたことを告白します。「キェシロフスキを好き、という人はそこまで多くはないかもしれないが一定数はいるだろう、半日の間になくなっていても不思議ではない、まあその時はその時で仕方がないね」と、そんな気分で店に向かったのだ。すると、ありましたよ。二枚のDVD。そんなわけで、彼の初期作品集DVDの第2巻と第3巻を、私は格安で手に入れたわけでした。なんだか、子どもの頃のお祭りの射的で高い景品をあてたような気分であった(多分、あてたことはないけれど)。

 さて、そう考えると、第1巻も借りておいて、同じようにすればよかった、とも言えるわけですが、これはむしろそうしなくてよかった。転売を目的としているわけではないのだから、彼の作品を好きな人が、このように件のDVDを「分け合う」ことは、むしろ良きことではないか、などとも考えたのです。

 ただ、いくら正当な手段とはいえ、こうしたもの(某サイトでは結構な高値がついています)を格安で入手すると、ほのかな罪悪感がありますね。甘美さも多少はあるのですが。

 

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