子ども時代に覚えたことは忘れないもの

 凡庸極まりないタイトルが示すように、よくある話です。

 

 最近娘が合唱に凝っており、音楽の副読本に出てくる歌を片端から歌っている。悪いことではないので、適当に褒めたり、時に一緒に歌ったりしている。

 昨夜のこと、夕食後に件の副読本にある歌を順に歌っていた娘が、少したどたどしく「ま~っかな太陽が、沈む砂漠に」と歌い出した(たどたどしかったのは、この曲、読譜が少々難しいからだと思う)。その瞬間、まるで私の脳のある場所にスイッチが入ったかのように、「大きな怪獣が、のんびり暮してた」と口をついて歌詞が出てきて、そのまま一番を最後まで歌いきることとなった(二番の歌詞は覚えていなかった)。娘はやや呆気に取られて、「あれ、知っているの?」と聞いてきたので、記憶を辿りながら、「確か、小学校の四年生か五年生の時に歌ったはず」と答えた。しかし、それ以降歌ったことはなかったはずなので、何十年ぶりということになるのだろうか。それだけの間がありながら自分が歌詞をしっかりと覚えていることには、少々驚いた。そして、歌いながら自分が遥かな過去に運ばれていくような郷愁を味わい、こうした思いを抱くことができることに、微かな幸福感をも覚えた。

 この「怪獣のバラード」、ご存知の方が多いと思いますが、一応、合唱のリンクを貼っておきます。

 

https://www.youtube.com/watch?v=Xj-V21UoByU

 

 恐らくすべての人が似たような経験を持つと思うけれど、やはり、子ども時代に暗唱したもの、わけても節回しのよい言葉や歌は、忘れないものなのですね。親や周りの人が子どもに贈ることのできる最大の財産は、心の奥底にずっと残る「言葉」なのだという当たり前の真実に、改めて思いを致すこととなりました。

 

 ところで、この曲の由来を知らないなと思い検索をかけてみると、NHKの若者向けの番組で最初に放送されたそうですね。歌詞を書いた岡田富美子さんという方は、「スシ食いねェ!」や「ロンリーチャップリン」の作詞も手掛けていらっしゃるとのこと。わかるような気がする。なお、年がもろにバレるのだが、この曲が初めて放送された時、私は母の胎内にいた。母が若者向けのこの番組をわざわざ見ていたとは思わないが、たまたまこの番組をつけていた可能性もゼロではない。そうすると、まだ胎児だった私がこの曲を耳にした(?)可能性もある。私がこの曲に対して覚える微妙な郷愁を含んだ愛着は、もしかしたらその故かもしれないと、そして、胎児時代に覚えたことは忘れないもの、と言ったら、妄想がすぎるだろうか?

 

M&M's