スキーを買ってみた

 色々あってスキー道具を一通り買った。娘のスキーに付き添うのが主たる目的だが、折角だから自分もスキーを始めようと思ったのだ。

 状況が現在のようでなければ、スキーに詳しい友人に付き添いを頼み、数軒回って物色の上、吟味して買う、ということになるのだろうけれど、そうもいかない。また、時間をかければ良いものと出会えると決まっているわけでもない。そもそも、それが良いものかを見極める力は私にはない。

 だから、ある程度信頼できそうな量販店に、店員の方が時間をかけて相談に乗ってくれそうな平日夜に出かけ、およその目途をつけることとした。店員の方に伝えた内容は、「スキーは〇十年ぶり」、「娘の付き添いで出かけたい」、「娘の方が滑れる」、「現状、将来とてもうまく滑れるようになるといったことは期待していない」、といったあたり。相手は心得た感じで(多分、私のような客も一定数いるのでしょう)、一式見繕ってくれた次第。提示された金額が過度に高いものではないかを確認するために、別の店も一応まわってみたが、妥当な額だったようなので最初の店を再訪し購入。

 しかし、大げさではなく、目の玉が飛び出るような値段だった。それでも、スキーに詳しい友人に聞いてみたら「まあ、格安で揃えられたんじゃない?」ということの答だったから、このスポーツ、相当に金のかかるスポーツなのですね。好きな人は数万単位のものを数年に一度は買い替えていく、ということですから、スマホみたいな感じかしら、と思ったのだけれど(私はスマホを持っていません)、それを話した知人には、「多分違う」と言われてしまった。

 なんにせよ、相場感のわからない買い物は怖いものです。本やらCDなら相場感もわかるけれど、スキーはとんと見当がつかない。かといって、それを理由に道具を買わなければそもそも何も始まらない。年をとると新しいことに手を出すのが億劫になるという感覚、よくわかりました。

 

 しかし、それでも、年をとっても、あるいは年をとったからこそ、新しいことには手を出した方が良いようにも思う。というのも、今回私は、ほとんど未知のことを新たに学び始めようとし、店員の方や友人にあれこれ聞いて回り、それこそ「そこからですか?」と言われるような質問を連発することとなったからだ。相手の方の答に微苦笑が入り混じっていたことも一度ではない。恥ずかしい思いをしたことも多々ある。幸いどの方も親切で、せいぜいのところ「微苦笑」で済む程度だったが、意地悪な人にあたったら、さぞや笑われたことであろう。しかし、年をとってからこういう感覚を持つことは、やはり大切なのだと、改めて思い知ったことはやはり良かった。直接の知人はご存知のように、そしてそうでない方も薄々は気づいていらっしゃるように、私は他人様に物事を教えることを生業の一つとしている。この仕事を長く続けていると、たとえ自分ではそのつもりがなくとも、職業病ともいえるある種の傲慢さが染み付くことは間違いない。その結果、せっかく門を叩いてくださる方に非礼な態度をとっていることもあるかもしれない。今回自分が徹底的に初心者の立場を身に置いたことは、翻って、自分の日頃の振る舞いを振り返るよすがとなった。それだけでも、〇万円を払った価値はあった、と言ったなら、格好のつけすぎか。

 教員関係については、その能力向上やら何やらで、FDだなんだと喧しいが、世の研修一般と同じく、あれが直接役に立つことはあまりない(良いものもあるので、全く無駄だとも言わないが)。実を求めるのであれば、一定の年齢に達した教員に、全く未知のことを習い始めることを義務化してみたらどうだろうか? 皆さんお忙しいから無理なことはわかっているが、それでも、そんなことができたら良いと夢想する。

 

M&M's

 

追記:あれほどの値段がしたのに、まだ一度も使っていません・・・