プチ合宿

 皆さん、合宿は好きですか? 私は好きです。いや、年齢を考えれば、「好きでした」と言うべきか。子どものころから「合宿」と聞くと心が浮き立ちましたが、恐らく、家にいるよりは外にいるほうが好きだったことと、非日常感への憧れが理由でしょうか。。

 中学高校時代、私の所属していた音楽部は、夏休みと春休み、いつもとある湖畔の宿で合宿をしていましたが、湖がすぐに見える小ホールで合奏をする喜びには何ものにも代えがたいものがありました(そういえば、時々水上スキーの人が湖上を駆けていったことを、何とはなく思い出す)。練習に集中できるのも嬉しいし、夜、他愛のないトランプ遊びなどができるのも、楽しかった。
 大学に入ると、サークルの活動で夏に合宿に出かけるわけですが、合宿本来の楽しみに、夜の酒席の楽しみが入ってくる。これについては話し出すと長いので省略。
 人によっては、大学を卒業すると「合宿」は終わり、という人もいるかもしれませんが、私の場合は市民オーケストラにいたのでそちらの合宿に出かけたり、後は、仕事の関係の研修の引率などをしていました。もっとも、ここ十五年はそうした合宿もないなあ、と思っていたのですが、自分のための記録として記せば、八年ほど前、海外にいたときに、とある事情で同業の人たちと合宿をしたことがあった。楽しかったけれど、あれが「合宿」としては、最後ですね。しかし、ここまで「楽しかった」が多すぎて語彙が貧弱・・・

 

 こんなことをつらつらと思い出すきっかけは、もちろんあったわけです。
 最近、若い友人お二人ととある翻訳に取り組んでいます。翻訳は過去もしたことがありますが、どれも共訳で、うまくいった場合もあれば、訳文を巡るやりとりの中で、人間関係のいざこざが起こったこともありました。今回は、若い友人の方々が素晴らしいおかげで、比較的うまくいっています(と思いたいー本当は、こういうことは年長者は言わない方がよいのですが、お許しを)。
 もっともお二人と私はそれぞれ遠方に住んでいるので、普段はメールのやりとりがメインで、たまにZoomでの打ち合わせが入ってくる感じ。直接の打ち合わせはなかなかできません。とはいえこの手の作業は、たまには顔合わせをした方がよいもの。そうした次第で、「合宿をしませんか?」とお二人に声をかけたのでした。しかし、残念ながらお一人は家庭の事情で合宿は無理、とのこと。そうすると、二人で合宿、というわけにもいきませんが、とりあえずお一人に私の住む街に来ていただき、数日間ご一緒したわけです。相手の方はホテルですが、私はさすがに家に帰るわけで、完全に「合宿」とは言えませんが、まあ「プチ合宿」と呼んでも的は外していないでしょう。
 スケジュールとしては、朝9時30分くらいにお会いし、17時すぎくらいまで、お昼ご飯を挟み、手もとに原文を置いて訳文はスクリーンに映しながら検討していきます。そうすると、なかなか仕事が進む(と思いたい)。やはり対面での会話だと、色々なアイデア、改善案がポンポンと出てくるし、リズムよく会話も進む。Zoomも悪くないですが、折々は実際にお会いしての討議がよいですね。
 一日中作業をするわけですから結構最後は煮詰まっており、その頭のほてりを冷やすためにも、夜はご一緒にお酒を呑む、ということになるわけです。これもまた、普段はできない話をじっくりすることができて楽しい時間となりました。仕事もいいですが、こういう時間があると、一段と合宿気分が増してきます。

 なんだか、ひたすらとりとめがない、単なる備忘録になってしまったけれど、「合宿気分」が楽しかった(また「楽しかった」と言ってしまった・・・)のは本当です。多くの時間を使ってくださったIさん、ありがとうございます。
 会社などでは、「休日まで同僚と一緒は嫌だよ」ということで、親睦の旅行なども今はあまりないようですが、私たちは、仕事を一緒にする仲間でも、必ずしもいつも顔を合わせることはない。こうして「合宿」をするのも、色々な意味でよいな、と思った次第なので、記録がてら記しておきます。

 

M&M's


付記1:ところで、こうして「合宿」の歓びを思い出すと、昔の楽器仲間とも合宿をしたくなってきます。

付記2:本当は文章を推敲したいのですが、まさにこの翻訳に気持ちをとられてしまい、そうした余裕がありませぬ・・・