イザベル・ファウスト

 この火曜日に、ダニエル・ハーディングの指揮するパリ管弦楽団のコンサートに行ってきた。私は普通、海外の一流オーケストラの演奏会にはあまり行かない。別に信念などの問題ではなく、単純にお値段がお高いからである。

 しかし今回はイザベル・ファウストが共演し、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾くとのことで、発売当日にチケットを買って(それでも、特別な先行販売で少し売れていた)、今回出かけてきたわけだ。

 結果としては、本当に満足の行く演奏会だった。

 ファウストのヴァイオリンは、ヴァイオリンソロのパッセージを様々に変化を加えつつ、まるで一筆書で書きあげるように弾きこなしていくのだが、恣意的な感じが全くしない。それぞれのパッセージが有機的に結びついて全体を盛り上げていく。また、3楽章では、この曲のチャーミングな側面を前面に出して、新たな側面を照らしだしているようであった。彼女の演奏としては、四年前にブラームスの協奏曲を聴いているが、今回はそれ以上に堪能したように思う。

 なお、休憩後はベートーヴェンの田園。この曲がメロディーよりはむしろ動機から構成されているということを前面に打ち出した、それなりに有機的な演奏だった。ただ、こんなことを言っても仕方ないのだけれど、こんな曲で演奏終了後にすぐに拍手を始めるってどんな神経なんだ。いや、本当に言っても仕方がないのですが、少しだけドクハキさせてください。

 

 ファウストやパリ管弦楽団の演奏を適確な言葉で書き記す能力は僕には足りないので、ちょっと別の話を。

 昔、プロのヴァイオリニスト(女性)と話していてファウストの話になり、「大ファンなんです」と言ったところ、ちょっとあきれたような顔で、「男の人って、本当、ファウストが好きな人、多いですよね」と言われてしまった。

 一瞬ひるんだのだが、後から考えてみると、思い当たる節もある。画像を調べていただくとわかるが、ファウストは知的な美人という感じだが、押しの強い感じではない(本当はすごい意志が強い人だと思うけれど)。いわゆる自身のアピールポイントをぐいぐい押してくるタイプではない。他方、クラシックを聴く男性のうちある種のタイプ、というのは、押し出しの強い美人には何となく気後れしてしまうのだが、知的なタイプの美人には、「もしかしたら仲良くなれるのでは」と、妙に期待をしてしまうように思う(自分について述べていることを告白します)。だから、ファウストのタイプには、自ずと心惹かれてしまうのだろう。

 そう言えば、僕はアンネ・ゾフィー・フォン・オッターも大好きだけれど、完全に同じ路線だ・・・

 自分がファウストやらオッターを好きなのは、本当に彼女たちの音楽性を愛してなのか、それとも、若き日から抱いてきた知的美人に対する行き場のない(?)期待のようなもののためなのか、段々わからなく、かつ恥ずかしくなってきたので、これにてドロン

 

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