遺伝スクリーニング PGS

不妊治療にあたって、私たちは、体外受精をするのは、一番確率の高い方法で一度きり、と決めていました。
それで子どもを授からなければ、それはそれでよいと思っています。


一番確率の高い方法ということで、
(1)採卵は自然周期ではなく、しっかりと卵巣刺激して出来る限り沢山の卵を採取する(私はPCOSがあったのでアンタゴニスト法)
(2)顕微授精をする
(3)遺伝スクリーニング(PGS:Preimplantation Genetic Screening)をする
の三つを実施しました。


日本では着床前診断は倫理的な観点から積極的には薦められていないようですが`(PGSは流産を繰り返す場合にのみ適用)、アメリカでは特に規制はなされておらず、私の主治医は当然のこととしてPGSをオーダーしました(保険適用でした)。
PGSは受精3日もしくは5日後の胚の胎盤になる部分から一部の細胞を採取して、染色体に異常があるかどうかを検査します。目的は、異常の少ない胚を選ぶこと。これにより、胚移植後の妊娠成立および出産の確率があがります。
私が現在かかっている病院は、40歳で、胚一つ移植あたり60%妊娠、45-50%出産という治療成績です。それに対して、私の以前かかっていた病院(PGSをoptionとしてのみ提供)は、全年齢で40%妊娠、25%が出産という治療成績です。(アメリカでは各病院の治療成績が政府の管理で公開されています。両者の治療成績を見て転院を決めました。)


PGSで正常とされる胚の数は、40歳くらいで検査した胚の4割くらい(Fig1B:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0015028216000662)らしいので、上の確率と合わせて考えれば、PGSは流産に至る可能性の高い胚を省くのに役立っているのだと思われます。
私の場合も、PGSの結果は論文のデータと一致しました(4割が正常)。


だとすると、PGSをしない場合でも、倍ちょっとの回数胚移植をすれば成績としては同じになるとは思うのですが(PGSの代わりに、移植後の生き残りで胚を選別するわけです)、流産による身体とこころへのダメージや失われるコストを考えると、PGSが使用できてよかったと個人的には思います。


不妊治療はただでさえ成功率が低いものだし、お金もかかるし、流産によって母体が受けるダメージは大きいのだから、体外受精をする場合には一緒にPGSも選択できたらいいと思います。


こけぐま