テレワーク異聞

 世の趨勢には逆らえず、あれこれテレワークめいたことをしている。もしかしたら、結構している部類に入るかもしれない。新しいことの常として、良い面と悪い面のそれぞれがある。そして、新しいことの常として、この風潮を一挙に進めようとする人とそれに抗う人がいる。私はといえば、現状、折角だから色々とその可能性は吟味しておきたいが、多少懐疑的。特に教育については、オンライン教育は次善の策と位置づけたほうがよいと思っている。理由は単純で、受け手の目や身体への負担が半端ないと思っているから。だから、第二波、第三波に備えてオンライン教育を整えつつ、子供の間で例のウィルスが多少は流行る可能性については、大人は腹をくくったほうが良いのでは、などと考えている(もっとも、この手の問題に関する私の意見は結構的を外しているので、これも撤回する日が来るかもしれません・・・)。

 しかし、今日はそうした話をしたいのではない。テレワークについての一般的考察はしたいのだけれど、今日は違う話。
 オンライン会議やら何やらをすれば、当然その延長線上にオンライン飲み会が出てくる。私も結構楽しんでいる。メリットとデメリットに関する考えは、他の人と大体同じだろう。
 すでに何度か話したことのある人とは、目の前にいないことは残念だが、かなり話ができる。特に、仕事の延長で飲んでいるときは、ちょっと資料を画面共有などすると、結構そちらに集中することができて悪くない。そもそも、アルザスや京都にに住む人と何らお金をかけずに話すことができるというのは、本当にありがたいことだ。これまでもこうした作業はできたはずだけれど、今回の一連の流れの中で、こうしたことが自然となったように思う。それは恐らく、悪いことではない。
 他方、時間を切ることが難しいとか、ついつい飲みすぎてしまう、というのはデメリットになるだろうか。とはいえ、面倒な上司などと飲んでいて絡まれ始めたら、「あれ~、回線が不安定みたいで」とか言いながら適当に脱出することもできそうなので、メリットのほうが多いように思う。

 ところで先日、飲み会というほどではないが、友人とZoomで話した。1月24日の記事に登場いただいた友人である。彼は音楽への素晴らしい見識を持主だが、職業的な音楽家ではない。本職は私の本職と似たものである。そんなわけで、時々、彼から相談事がある(もちろん逆もある)。先日ちょっと質問の電話があって、テレワークの話にもなり、じゃあZoomで話そうよ、と私から誘った。
 ただ、彼は「顔を出したくない」というので、じゃあ適当に写真を選んでおいてよ、名前を相手に喋るのは味気ない、といって彼をミーティングに招待した。そして、「入室」してきた彼の写真を、と見ると、ヤギである。動物のヤギである。彼はちょっと別口で色々とヤギの縁のある人なのだが、こう来るか、と力が抜けた。
 気を取り直して話してみるのだが、どうもリズムがのらない。だって、向うの質問は結構難しいもので、まあこっちはビールを飲みながらとはいえ、あれこれ考えてから答えるのだが、しばらく目をつぶって、「よし」と思って話しだそうと画面を見ると、ヤギですよ。「概念Aを前提にして考えると、BとCの可能性が出てくるけれどDというファクターを考慮した場合」なんて感じで話し始めようとすると、目の前にいるのがヤギ。これはどうにもこうにも気分が乗らない、というか、すさまじくバカにされている感じがする。数多ある動物の表情のうちで、ヤギのそれほど人間をバカにしたものはないのではないか、と思った(皆さん、ヤギの画像を検索してみてください-私の言っていることをおわかりいただけるかと)。
 しかし、この感じは同時に悪くないような気もする。私たちの議論することなど、大半は実はどうでもよいことで、口角泡飛ばして着論するほどのことは少ない。今回も(頼んできたのはあちらさんだけれど)こちらの小難しいあれこれに対して、「まあ、よくわからないけれど、そんなに難しく考えないほうがいいんじゃない」とヤギさんに言わていると捉えれば、まあそうなのかしら、という気もしてくる。
 あと、以前も書いたように、今回の件、ウィルスは意思ある存在ではないにしても、このウィルスによって私たちの傲慢さはずたずたにされた、というのが私の現状認識なのです。それに比べれば、ヤギにニカーッとバカにされるくらい、大したことはないとも思えてくるのです。いや、やっぱり嫌かな・・・

 オチがなくってすいません。


 M&M's