図書館の話(1)

 相変わらず仕事やら何やらで、どうしても書くことが遅れてしまう。一層のことテーマを決めてしまった方が、「何を書くか」に悩まなくてよくなるので、そうすることとした。責を塞ぐことだけが目的となっている気もするが、これだけの期間書き続けているのだから、「週に一度」というノルマを(形だけでも)守ることにも意義はあろう。
 数回にわたって書き続けることができる事がら、というと、図書館(室)の思い出ということになろうか。

 私が通っていた幼稚園については、間取りもよく覚えているし、図書室(兼遊戯室)があった場所も覚えている。もっとも、そこでどんな本を読んだかは全く覚えていない。このころの読書は、小学校低学年の時期のそれと入り混じって、くっきりとした形をなしてくれない。
 小学校低学年の時期は、小学校の図書室以上に、近くにあった私立の児童文庫によく通った。民話の採話でも知られる高名な児童文学家が主催なさっていたこの児童文庫は、近くの団地の集会室を使っていた。どのような仕組みだったのだろうか? 子どもの多い団地だから、もしかしたら団地の自治会と「協力関係」のような形にあったのかもしれない。団地に住んでいない子どもにも開放されていたのだから、ありがたいものだ。通った期間は二年か三年程度のことと思うが、あの児童文庫には、今でも深く感謝している。民話の類は今でも好きだが、そうした嗜好は、もしかしたらあの頃に根付いたのかもしれない。
 小学年も高学年になってくると、通う図書館は近くの公立図書館となった。ここにも随分と通ったので、今でもどのあたりにどんな本があったかは、大体覚えている。
 私は小学校六年生の頃、中学受験のため塾に通い、毎週日曜日の午前中は定期試験を受けていたのだが、午後はそのまま、図書館に行き、小学生定番、ポプラ社の『江戸川乱歩全集』『怪盗ルパン全集』『名探偵ホームズ』シリーズなどを読み耽っていた。全部読んだかは自信がないが、相当数読んだことは間違いない。ああ、後、赤川次郎の文庫本を借りてきてよく読んでいたー赤川次郎がメディアにやたら出ていた時期だったので、それに流されたのだろうー中学以降は全く読まなかったと思う)。
 こうして振り返ると、極めてよくある図書館(室)の経験だな、と思う。

 ところでこうして書いてみてわかったのだが、どんな本を借りたのか、よく覚えていないのだ。相当に本が好きだったことは間違いないが、シリーズとして意識して読んだものでない限り、借りた本を巡る記憶は淡い、いや、ほとんどないものとなっている。購入して家に置いてあった偕成社文庫のいくつかは記憶によく残っているのに(『大どろぼうホッツェンプロッツ』や、ラムの『シェイクスピア物語』など)。図書館を利用しての節約も大切だけれど、大切な本は、やはり子どものためには買ってあげるのがよいのかもしれない。
 ちなみに、娘は、近くの図書館のサーヴィスを利用して、簡単な読書記録をつけている。こうした記録によって、娘は、図書館で借りた本を大人になっても記憶に留めることができるだろうか?

 

M&M's

(11月7日記)