図書館の話(4)

 仕事に就いてからは、もちろん職場の図書館を主として利用するわけだが、その件については大した話はないので省く。
 この時期に記憶に残るのは、出張先で訪れた様々な都市の図書館のこと。もう二十年ほど前になるが、私は結構出張であちらこちらに出かけていたが、そうした折、業務が終わってから呑みに出るまでの間(出張後は一人で呑みに出るのが好きだった)、訪問した自治体の図書館でぶらぶらと時間をすごすことが多かった。
 この作業、案外と発見がある。自分がある程度通暁しているつもりの分野についても、見慣れぬ図書館の書棚で見てみると、案外と知らない本が見つかることがある。あるいは、知っている本でも、普段とは異なる姿のためか、魅力を新たに感じることもある。書棚の前を、サーっと「流す」だけでも、思いもかけない発見がある。
 そのようにして訪れた図書館で、観光でも訪れる価値のあるものを挙げておけば、仙台市民図書館となろうか。この図書館、ならびに併設の(?)「せんだいメディアテーク」の魅力は、ちょっと検索をかければすぐに出てくるので、ここで細かくは触れない。とはいえ、ゆったりとした空間の取り方や、手塚治虫的なデザイン(? 語彙が貧しくてすいません)はとても印象的。近くに行く機会があれば、ぜひ訪れてみていただきたい。

 ちょっと話は変わるけれど、自治体による図書館ではないが、小樽商科大学の図書館も印象に残る。この大学、小樽の街から急な坂を上ったところに位置し、図書館のいくつかの席からは、海がきれいに見える。好天の日、あまり人のいない古びた図書館の窓際で古い資料をめくりながらふと青い海に目をやると、「また見つかったよ 何が? 永遠が」と独り言つ気持ちになった。日本全国の大学図書館をすべて回ったわけではないから断言はできないが、あの小樽商科大学の閲覧席は、日本でも有数の素晴らしいものではなかったか?
 小樽商科大学からの帰途は、「地獄坂」という急坂を下るのだが、まだ明るいうちに帰ると、穏やかな海が見える。通学路から穏やかな海を眺めることができる大学というのは、どれくらいあるだろうか? (神戸大学がそうだったような気もする)
 ちなみに、小樽商科大学の知人に聞いたのだが、冬、雪の降った朝の地獄坂にはスキーのシュプールがあるそうだ。車が来る危険を考えると、「嘘だー」とも言いたくなるが、案外本当かも、と思わせる。それくらい急な坂なのです。こちらも、小樽観光の機会があれば、訪れてみてください。

 

M&M's
(11月23日記)